Classici giapponesi con furigana
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あくのはなたば
悪の花束
久生 十蘭
Leggi 悪の花束 (あくのはなたば) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.888 caratteri · 48 schermate
手提からなにか出そうとしていたところらしく、右の手袋を脱いで、開けた手提の口へ指先を入れている。
駅員はその傍に立って、ひと時、顔を見ていたが、いかにも異様なので、そっと手に触ってみると、氷のように冷たくなっている。駅員は驚いて、車室の前後のドアに錠をおろし、運転手に発車を待つように言っておいて、駅長を呼びに行った。
区の警察から係官が出張し、一等車を側線へ入れ、夕方までかかって検証した。心臓麻痺か、悪性貧血の急変だろうというのだが、解剖してみなければ、はっきりしたことはわからない。婦人の身許だが、手提の中には、乗車券、ハンカチ、鏡、粉白粉容れ、「シープル」という商標のついた小さな香水の瓶、そんなものが入っているだけで、手懸りになるものはなにもない。それで死体をモルグ(死体陳列館)へ収容して、翌朝の新聞に公示を出した。
正午頃からいろいろな人間が見にきたが、みな宛はずれな顔で帰った。夜の十一時過ぎ、四十二、三の実業家らしい紳士が、新聞を鷲掴みにして駆けこんできた。私はワグラム街で土地会社をやっているラウール・モニエというものだが、家内のリュシィが正午に家を出たきり夜になっても帰らない。