Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

Leggi 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 151.280 caratteri · 301 schermate

Aozora Bunko

彼は何だか背筋がゾクゾク寒くなって来た。じっと目を凝らしていると、ポーッと白い襖の蔭から、黒い朦朧としたものが、ヒョイとこちらを覗いては引込んで行くような気がした。

何かソッと腕に触るものがあるので、びっくりして振り向くと、博士がサンドイッチを摘んで彼に渡そうとしているのだ。どうやら博士自身もそれを頬張って、ムシャムシャやっている様子だ。

無言でそのサンドイッチを受取って、口に入れたことは入れたが、博士の所謂幽霊が気になって、今にもそいつが、向うの真暗闇から、バアッと飛び出して来るのではないかと思うと、食慾どころではなかった。

あとになって考えて見ると、そうして坐っていたのは一時間余りに過ぎなかったのだが、その一時間の長かったこと。林助手にはそれがたっぷり十時間にも感じられたのであった。

じっと我慢をして坐りつづけている彼の網膜には、あらゆる奇怪なるものの姿が、走馬燈のように去来し、耳には、彼自身の動悸の音が、種々様々の意味を持って、悪魔の言葉を囁きつづけた。

目を閉じれば瞼の裏の眼花となり、目を開けば暗闇の部屋に蠢く怪しい影となって、幻想の魑魅魍魎が目まぐるしく跳梁するのだ。