Classici giapponesi con furigana
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かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
Leggi 悲しめる心 (かなしめるこころ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.423 caratteri · 33 schermate
子供が魂しいに去られた後の姿ほど尊いものはない。まして水色と黄金色の許にあるそれは。
私の妹が生れたのは今から五年前の三月一日、雨が降って居た。
亡くなった九月十一日も雨が降り、小雨にけむる町中を私共は十三日に青山に行った。
雨に縁の深かった妹は雨の日に世に出て同じ様な日に世を去った。
何でもない事で居て私はやたらに思い出される。
私が斯うやって書いて居るのは何のためであろう。
書いているのが嬉しいのではない。
却って苦しみである。
思い出の涙は一行書く毎に頬を流れ、よしそうでないにしろ私の心は悲しさに満ちる。
けれ共私は書かないでは居られない。
不思議な事である。
斯うやって書くのは長い年月が立った後もなおその時の気持も失いたくないためでは無かろうか。
斯う云う書いたもの、――文字に現わされたものが無くても自分の生のある限りはその時の心を失い度ないと希う。
けれ共、時と云う偉大なもの――人間より数等力強いものに司配されなければならない私共は、忘れまいとしても時がその信じ切った力で忘れさせて仕舞うだろう。
情なくも時の力で忘れた時も尚その文字を見たならその時の気持に返れるだろうと私はこれを書くのだろう。