Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Leggi 愛のごとく (あいのごとく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 103.908 caratteri · 210 schermate

Aozora Bunko

ちょうど楽譜をくり、荻村のタクトを待つあいだで、彼の注視に気づいたバンド・マンはないはずだと彼は考えた。もう一度同じ策をつかった。ラストの起立した全員が礼をするとき、やはり拍手を送る彼女に顔を向けて、信二は首を下げなかった。

幸福は、ひとつの冴えた痛みに似ていた。彼女が自分を記憶してくれただろうことで、彼の胸は躍っていた。興奮は帰途のトラックのなかでもつづいていた。

十一月の終りの、ひどく寒い夜だった。安達の手腕なのか、それとも当然の処置であるのか、その帰りは霧粒に濡れた大型バスが衛門に停っていた。アヴェック・シートだった。信二は一番前の席に坐った。

外套の襟を立てて、席にかがみこむように坐る兄たちをうしろにして、信二はしかし寒さを忘れていた。その夜も黒い服の女は最後のステージまで残っていたのだった。後ろ半分に楽器や譜の包みを置き、ほとんど満員のバスの中には、一人、町まで行くらしい若い兵士がいた。

バスは小刻みに慄えながらまっすぐに海に向い、あぶれたのか、すでに仕事をすませたのか、道の端を点々と女たちが歩いて行く。女たちはたいてい一人ではなく、ひとつの外套にくるまった二人の女もいた。