Classici giapponesi con furigana
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あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
Leggi 或る女の手記 (あるおんなのしゅき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.447 caratteri · 37 schermate
彼の姿が見えないと、災難を免れたような気がした。けれども、それはごく稀れであった。
私は近所に、同じ学校へ通うお友達を持たなかった。所が或る日、親しいKさんが私の家へ遊びに来るというので、二人で学校の帰りに、お寺の前を通りかかった。その時もまた、彼が箒を持って立っていた。私が足早に通りすぎるのも構わずに、Kさんはゆっくりした足取りで歩きながら、彼の方をじろじろ見返してるらしかった。そして私に追いつくと、Kさんはこう仰言った。
「いやな坊さんね!」
私は何と答えていいか分らなかった。けれどもその頃から、彼の様子の変った原因は皆私にあることを、はっきり感じてきた。そして、その感じがはっきりすればするほど、益々私は途方にくれた。私は絶えず脅かされ続けた。こうして私の若い生命は、どんなにか毒されたことであろう。
七月の或る朝、私は少し時間を後らして、急ぎ足でお寺の前を通りかかった。するとやはり彼が、箒を持ったまま、御門の柱によりかかって立っていた。私はそれをちらりと見ただけで、顔を俯向けて通りすぎた。そして十歩も行かないうちに、彼が私の後をつけてくるのを、はっきり感じた。