Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate
葉子はそんな事には気もかけずに物すごい笑顔でことさららしく帳場にいる男にちょっと頭を下げて見せて、そのままふらふらと階子段をのぼって行った。ここが倉地の部屋だというその襖の前に立った時には、葉子は泣き声に気がついて驚いたほど、われ知らずすすり上げて泣いていた。身の破滅、恋の破滅は今夜の今、そう思って荒々しく襖を開いた。
部屋の中には案外にも倉地はいなかった。すみからすみまで片づいていて、倉地のあの強烈な膚の香いもさらに残ってはいなかった。葉子は思わずふらふらとよろけて、泣きやんで、部屋の中に倒れこみながらあたりを見回した。いるに違いないとひとり決めをした自分の妄想が破れたという気は少しも起こらないで、確かにいたものが突然溶けてしまうかどうかしたような気味の悪い不思議さに襲われた。葉子はすっかり気抜けがして、髪も衣紋も取り乱したまま横ずわりにすわったきりでぼんやりしていた。
あたりは深山のようにしーんとしていた。ただ葉子の目の前をうるさく行ったり来たりする黒い影のようなものがあった。葉子は何物という分別もなく始めはただうるさいとのみ思っていたが、しまいにはこらえかねて手をあげてしきりにそれを追い払ってみた。