Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あるそびょう

或る素描

豊島 与志雄

Leggi 或る素描 (あるそびょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.802 caratteri · 24 schermate

Aozora Bunko

それで一家の生活は、亡父の功労で政府から母親が貰ってる金で――それも僅少なものだったが――重に支えられていた。いつも貧乏だった。

彼が撞球に耽った頃は、最も母親は困難したらしかった。彼はどうしても、毎晩撞球場へ行かないでは落付けなかった。その上、行けば帰りは十二時過ぎることが多かった。母親は起きて待っていた。そのことで或る時二人は喧嘩をした。

「表の締りをしないで寝るのが、いくら不用心だからって、起きて待っていられると、落ちついて球も撞けないじゃありませんか。お母さんがいつまでも起きて待ってるというなら、僕だって意地です、いつまでも帰って来やしませんよ、夜が明けるまで帰って来ませんから……。」

そんなことがあって、それから後は、母親は先に寝てしまうことになった。表門に鍵をかって、中の格子と戸だけを引寄せておいた。彼はその表門を乗り起してはいって来るのだ。

そして彼はいつも、睡眠不足の蒼黒い顔色をしていた。

ただ、彼のそうした耽溺は、時々対象が変っていった。碁に夢中になって、碁会所に入りびたってるかと思うと、何かのきっかけで行かなくなってしまった。そして友人と二人で、碁会所の前なんかを通りかかると、そちらをじろりと見やりながら、さも憤慨してるような調子で云い出した。