Classici giapponesi con furigana
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せんじょう
戦場
夢野 久作
Leggi 戦場 (せんじょう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.769 caratteri · 51 schermate
候補生も何か感じているらしく、その大きく見開いた無感覚な両眼から、涙をパラリパラリと落しているのが、月の光りを透かして見えた。
私は外套のポケットから使い残りの脱脂綿を掴み出してその涙を拭いてやった。……すぐに凍傷になる虞があるから……すると候補生は、わななく指で私の右手を探って、その脱脂綿を奪い取ると、なおも新しく溢れ出して来る涙を自分で拭い拭い立停まった。ガクガクと戦く左足の苦痛をジイッと唇に噛みしめ噛みしめ、だんだんと遠ざかって行くワルデルゼイ軍医大佐の佩剣の音に耳を傾けているようであったが、やがて極めて小さい、虫のような声で私に問うた。
「軍医大佐殿とはモウ余程離れておりますか」
「……ソウ……百米突ばかり離れております。何か用事ですか」
候補生は答えないまま空虚な瞳を星空へ向けた。血の気の無い白い唇をポカンと開け、暫く何か考えているらしかったが、やがて上衣の内ポケットから小さな封筒大の油紙包を取出して、手探りで私の手に渡して、シッカリと握らせた。
しかし私は受取らなかった。彼の手と油紙包みを一所に握りながら問うた。
「これを……私に呉れるのですか」