Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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せんじょう

戦場

夢野 久作

Leggi 戦場 (せんじょう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.769 caratteri · 51 schermate

Aozora Bunko

けれども大佐は候補生の微笑に気付かなかったらしい。今度はハッキリした軽い冷笑を片頬に浮かめながら今一度、一同を見廻わした。

「何だ。皆泣いているのか。馬鹿共が……何故早く拭わぬか。凍傷になるではないか……休めい……」

負傷兵たちが一斉に頭を下げてススリ泣きを初めた。各自に帽子や服の袖で、頬を拭いまわし初めると、今まで緊張し切っていた場面の空気が急に和ごやかになって来た。

ケンメリヒ中尉が背後の工兵隊を顧て号令を下した。まだイクラか不満な声で……。

「立てえ銃……休めえ」

「気を附け……」

と大佐が負傷兵たちに号令した。右翼の兵卒が二名出て来て、気絶している軍曹を抱え起して行った。

「皆わかったか」

「……わかりました……」

と全員が揃って答えた。生き返ったような昂奮した声であった。

大佐も幾分調子に乗ったらしい。釣込まれるように両肱を張り、両脚を踏み拡げて、演説の身構えになった。

「……よろしい……大いによろしい……現在の独逸は、数百カラットの宝石よりも、汝等に与える一発の弾丸の方が、はるかに勿体ない位、大切な場合である。同様に汝等の生命が半分でも、四分の一残っていても構わない、ヴェルダンの要塞にブッ付けなければならないのが我儕、軍医の職務である……わかったか……」