Classici giapponesi con furigana
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
Leggi 扇野 (おうぎの) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.727 caratteri · 67 schermate
「うまくやれたかしら」
「ああ、――」栄三郎はわれに返ったような眼つきをした、「有難う、気がつかなかったよ、ちょっと待っていてくれ」
「どうなさるの」
彼は返辞をせずに歩きだした。
二十間ばかりいった夏草の上に、半ばひらいたその扇子が落ちていた。薄と薄の間の、短い萱草の上に、――金地に赤く花を描いた華やかな色が、まわりの夏草の緑から浮きあがってみえた。
「これだ、これだ、――」栄三郎は昂奮して呟いた、「これを枯野に置くんだ、道傍の枯草の上に、……これでできた」
そのとき高い人声が聞えた。
喚くような声だったので、振返ってみると、二人の侍がおつるになにかどなっていた。いま登って来たのだろう、二人とも酔っているとみえてひょろひょろしているし、一人は手に大きな瓢を持っていた。
――こいつはいかん。
栄三郎は走りだした。途中で三尺ばかりの枯枝を拾い、走りながら見ると、侍の一人がおつるの手を掴んだ。
「あたしは芸妓です」とおつるの云うのが聞えた、「だからお客さまがお望みになれば、山へだってお供をしますよ」
「なにを云うか、この不義者」
おつるの手を掴んだ男がそう喚いた。