Classici giapponesi con furigana
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てがみ
手紙
久生 十蘭
Leggi 手紙 (てがみ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.158 caratteri · 30 schermate
は一噸半から二噸半、広さは半町平方くらいのが普通にいて、それが海の上に浮きあがると、ラジャーの邸の庭よりまだ広く、見渡すかぎり、海がいちめんに赤紫に見えるほどです。サウシテ背中においている寄生虫や、えぼし貝をとるために、船の底に背中をこすりつけてくるので、刳舟などはいっぺんにひっくりかえされてしまうのであります。
そういう心配な日が何日もつづいたある晩、村上さんが私をゆりおこして、
「海で赤ん坊が泣いているぞ」といいました。
星だけ光る暗い海の上で、シクシクと赤ん坊が泣くような声が聞えます。だが、それは人間の赤ん坊ではない。母鯨にはぐれた鯨の赤ん坊が、この舟を母親かと思い、一心についてあるきながら、シクシク泣いているその声なのです。私がそういいますと、どうしたのか、村上さんは急に腹をたてて、
「おい、四郎、お前、母親が恋しくなったのだな。帰りたかったら、さっさと帰れ。おれを、そのへんの岸へあげて帰ればいい」といいました。
私のシクシク泣く声と、鯨の赤ん坊のシクシク泣く声がよく似ていて、いっそう悲しい気がしました。鯨の赤ん坊は、朝まで舟についていましたが、夜があけると、どこかへ行ってしまいました。