Classici giapponesi con furigana
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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
Leggi 文藝別冊[総特集]岡本綺堂 (いけぶくろのかい) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 72.671 caratteri · 149 schermate
どうしてこんな酷たらしい目に逢ったのでしょう。六三郎は惣身に冷や水でも浴びせられたように感じて、息ももう詰まってしまいました。からだは石のようになって、ふるえることも出来なくなりました。
吉五郎は黙って悠々と酒を飲んでいます。大勢の子分達もなんにもいわずに酒を飲んだり、煙草をのんだりしているのです。燭台の煌々と明るい広間はただ森閑として、庭に鳴いている虫の声が途切れ途切れにきこえるばかりです。六三郎はもう生きているのか、死んでいるのか判りません。唯さえ蒼白い顔は藍のように変わってしまって、ただ黙ってうつむいていると、やがて吉五郎はじろりと見かえって、「若けえ人に飛んだお下物を見せたが、おめえはあの女を知っているかえ。」と、こう訊いたそうです。知っていると言ったらどうするでしょう。この時に六三郎はなんと返事をすればよかったでしょう。その返事の仕様一つで、自分も女とおなじ運命に陥るのは眼に見えています。
もし六三郎に勇気があったら、自分もおなじ枕に殺されても構わない、なぶり殺しにされても厭わない。血だらけになった女の死骸をしっかり抱いて、これはわたしを可愛がってくれた女ですと大きい声で叫んだかも知れません。