Classici giapponesi con furigana
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しゃこう
斜坑
夢野 久作
Leggi 斜坑 (しゃこう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.977 caratteri · 39 schermate
その福太郎の眼の前には、稍暫くの間、おなじ暗黒の光景が連続していた。しかしその暗黒の中に時々、安全燈の網目を洩れる金茶色の光りがゆるやかに映したり、又静かに消え失せたりするところをみると、それは福太郎が斜坑の上り口から三十度の斜面へ歩み出した時の記憶の一片が再現したものに違いなかった。その仄かな光線に照し出された岩の角々は皆、福太郎の見慣れたものばかりであったから……。
けれども、やがてその金茶色の光りが全く消え失せて、又、もとの暗黒に変ったと思うと間もなく、その暗黒のはるかはるか向うに、赤い光りがチラリと見えた。
それは福太郎が、炭車と落盤の間に挟まれる前にチラリと見た赤い光りの印象が再現したものであった。しかもその時は坑口に沈む夕日の光りではないかと思っただけに、ホントウは何の光りか解らないまま忘れてしまっていたのであったが、現在眼の前に、その刹那の印象が繰返して現われて来たのを見ると、その光りの正体が判然り過ぎる位アリアリとわかったのであった。
それは連絡を失った四函の炭車の車輪が、一台八百斤宛の重量と、千五百尺の長距離と、三十度近くの急傾斜に駈り立てられて逆行しつつ、三十哩内外の急速度で軌条を摩擦して来る火花の光りに外ならなかった。