Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.841 caratteri · 376 schermate
海嘯の襲来をまえにしながら、何でみずから堤防の口を開けておけと命じるのか――人々には家康の気もちが分らなかった。
「いや、それまでには及ぶまいかと存じます。後から引揚げてくる味方には、その都度、門を開けて、入れてつかわせばすむことです。特にそのため御城門を、八文字に開いておかずとも――」
鳥居元忠が云いかけると、家康は笑って、彼の思いちがいを諭した。
「帰り遅れた味方のためではない。かならず勝ち誇って、これへ潮のごとく襲せ来るであろう甲州勢に対する備えだ。――ただ城門を開けおくばかりでなく、大手の門外五、六ヵ所に、煌々と、大篝を焚かせい。また城内には燎火を旺んに焼かせるがよい。――ただし防禦は厳に、部署は整然と、鳴りをしずめ、敵の懸りようを見まもっておれ」
この場合、何という放胆な対策だろう。諸将は余りにも剛愎な彼のことばに、遅疑をいだくまでもなく、はッと服命して、各※(二の字点、1-2-22)の持場へ駈け競った。
城門の鉄扉は、家康の胸のごとく、大きく開け放された。
まっ赤な篝が、濠の外から玄関まで、煌々と雪明りに燃えだした。
家康はそれを眺めながら、ふたたび本丸のほうへ歩を移していた。