Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 197.228 caratteri · 394 schermate
まだ朝霧が深く、河ひとつ距てた城の石垣も狭間も白くぼかされて、十分に視野が展けないからである。
雲の破れから、かッと、夏の朝の強い陽がさした。強右衛門の髪の毛は、さすがに一すじ一すじ光ってそそけ立って見える。――城の狭間も鮮やかに見え出していた。
ここの異様な物を発見した城兵は、すぐ全城へ触れたにちがいない。櫓の狭間にも武者溜りの狭間にも、そのほかあらゆる兵の居場所に、城兵の顔が集まった。そして、何やら云い躁ぐ声が、滝川の水音を越えて、強右衛門の耳にも聞えて来る。
「強右衛門ッ、強右衛門ッ。――申せ、なぜ黙っておるか」
穴山梅雪の部下の河原弥太郎という者が、槍の柄で十字の杭をたたいた。すると、響きに応じるように、強右衛門は、くわッと、口を大きくあけて、
「あら、なつかし、城中の衆ではお在さぬか。かくいうは、先夜お別れを告げた鳥居強右衛門勝商でござる。岡崎への使いの御返事、ここより申そう程に、耳をそばだてて聞き給えや――」
明らかに声は届いてゆくとみえる。一瞬、武田方でも固唾をのんだ。強右衛門は唇をなめて、ふたたび、咽の奥まで朝の陽が映しこむばかり口を開いた。