Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふたりのとも

新潮日本文学1 森鴎外集

森 鴎外

Leggi 新潮日本文学1 森鴎外集 (ふたりのとも) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.954 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

サフラン

名を聞いて人を知らぬと云うことが随分ある。人ばかりではない。すべての物にある。

私は子供の時から本が好だと云われた。少年の読む雑誌もなければ、巌谷小波君のお伽話もない時代に生れたので、お祖母さまがおよめ入の時に持って来られたと云う百人一首やら、お祖父さまが義太夫を語られた時の記念に残っている浄瑠璃本やら、謡曲の筋書をした絵本やら、そんなものを有るに任せて見ていて、凧と云うものを揚げない、独楽と云うものを廻さない。隣家の子供との間に何等の心的接触も成り立たない。そこでいよいよ本に読み耽って、器に塵の附くように、いろいろの物の名が記憶に残る。そんな風で名を知って物を知らぬ片羽になった。大抵の物の名がそうである。植物の名もそうである。

父は所謂蘭医である。オランダ語を教えて遣ろうと云われるので、早くから少しずつ習った。文典と云うものを読む。それに前後編があって、前編は語を説明し、後編は文を説明してある。それを読んでいた時字書を貸して貰った。蘭和対訳の二冊物で、大きい厚い和本である。それを引っ繰り返して見ているうちに、サフランと云う語に撞着した。まだ植学啓源などと云う本の行われた時代の字書だから、音訳に漢字が当て嵌めてある。