Classici giapponesi con furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Leggi 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 247.330 caratteri · 497 schermate
私は、この民子さんの素足を見た事がない。
喜びにつけ、悲しみにつけ、私は私の人生に倦怠を感じはじめた。偶然から湧いて来る体験、そンなものにほとほと閉口頓首、男といっしょにいるのも厭、夜の酒場勤めも長続きするものではないとなれば、結局は女中にでもなるより仕方がないけれど、これも私の柄にはあわない。今日で三日になるけれど、何となく居辛い。ここの雨戸の開閉がむずかしいように、何とも不馴れなことばかりなり。
己惚れの強さがくじけてしまう。何とも楽なことではないけれども、楽をしようなぞとは思わぬかわりに、ほんの少々のひまがほしい。女中ふぜいが、深夜に到るまで本を読んでいるなぞとは使いづらいに違いない。こちらも気の引けることだけれども、今夜こそは早く電気を消して眠りにつこうと思いながら、暗いところではなおさらさえざえとして頭がはっきりして来る。越し方、行末のことがわずらわしく浮び、虚空を飛び散る速さで、瞼のなかを様々な文字が飛んてゆく。
速くノートに書きとめておかなければ、この素速い文字は消えて忘れてしまうのだ。
仕方なく電気をつけ、ノートをたぐり寄せる。鉛筆を探しているひまに、さっきの光るような文字は綺麗に忘れてしまって、そのひとかけらも思い出せない。