Classici giapponesi con furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Leggi 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 247.330 caratteri · 497 schermate
一ツ二ツの童話位では満足に食ってはゆけないし、と云ってカフエーなんかで働く事は、よれよれに荒んで来るようだし、男に食わせてもらう事は切ないし、やっぱり本を売っては、瞬間瞬間の私でしかないのであろう。夕方風呂から帰って爪をきっていたら、画学生の吉田さんが一人で遊びにやって来た。写生に行ったんだと云って、十号の風景画をさげて、絵の具の匂いをぷんぷんただよわせている。詩人の相川さんの紹介で知ったきりで、別に好きでも嫌いでもなかったけれど、一度、二度、三度と来るのが重なると、一寸重荷のような気がしないでもない。紫色のシェードの下に、疲れたと云って寝ころんでいた吉田さんは、ころりと起きあがると、
瞼、瞼、薄ら瞑った瞼を突いて、
きゅっと抉って両眼をあける。
長崎の、長崎の
人形つくりはおそろしや!
「こんな唄を知っでいますか、白秋の詩ですよ。貴女を見ると、この詩を思い出すんです。」
風鈴が、そっと私の心をなぶっていた。涼しい縁端に足を投げ出していた私は、灯のそばにいざりよって男の胸に顔を寄せた。悲しいような動悸を聞いた。悩ましい胸の哀れなひびきの中に、しばし私はうっとりしていた。