Classici giapponesi con furigana
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しんさいゆうき
新西遊記
久生 十蘭
Leggi 新西遊記 (しんさいゆうき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.654 caratteri · 52 schermate
西蔵一の大河ブラマプートラの上流で、氷河の溶けて流れだす一万六千尺の高地の川を、零下十度の寒風の吹きすさぶさなかに胸まで入って渡り、北へ二十日、高地の雪を喰いすぎ、肺の凍傷にかかって血を吐き、人間の影のようになって弟という天幕のある河原に着いた。
ヤクを返すと、天幕のあるじはあわれに思ったかして、山羊を供につけてくれた。ギャトーという町の入口にムヤツォという男がいるからそこへ置いて行けという。翌朝、どれほどの重さもない荷を山羊の背につけてまた北へ四日、マナサロワール湖は近いと聞いたが、行けども行けども不毛無人の原野である。氷河がおしだしてきた漂石と凍土は、何万年かの間、酷烈な寒気に傷められ、微塵に分解をとげて灰のように軽くなり、風が吹くと砂霧になって浮遊する。動くものといえば地の上を流れる雲の影と砂の波紋。万物涸れつくして物音一つなく、死相をおびて寂漠と静まりかえっている。一滴の水も一片の日蔭もないチャンタンの原を、一点の塵となって漂っていると、ある日、猛烈な砂嵐が吹きつけてきた。一望無限の野面は荒天の海のように盛りあがり湧きたち、うねりかえし逆巻き、想像に絶した異様な波動を示しながら猛り狂う。