Classici giapponesi con furigana
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しんしゃくしょこくばなし
新釈諸国噺
Leggi 新釈諸国噺 (しんしゃくしょこくばなし) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 93.562 caratteri · 179 schermate
「式部、」と駕籠の中から若殿が呼んで、「蛸にも駕籠をやれ。」と察しのいいところを見せた。
「は、ただいま。」と式部は平伏する。蛸は得意だ。
それから、関、亀山、四日市、桑名、宮、岡崎、赤坂、御油、吉田、蛸は大威張りで駕籠にゆられて居眠りしながら旅をつづけた。宿に着けば相変らず夜ふかしと朝寝である。この丹三郎ひとりのために、国元を発足した時の旅の予定より十日ちかくもおくれて、卯月のすえ、ようようきょうの旅泊りは駿河の国、島田の宿と、いそぎ掛川を立ち、小夜の中山にさしかかった頃から豪雨となって途中の菊川も氾濫し濁流は橋をゆるがし道を越え、しかも風さえ加って松籟ものすごく、一行の者の袖合羽の裾吹きかえされて千切れんばかり、這うようにして金谷の宿にたどりつき、ここにて人数をあらため一行無事なるを喜び、さて、これから名高い難所の大井川を越えて島田の宿に渡らなければならぬのだが、式部は大井川の岸に立って川の気色を見渡し、
「水かさ刻一刻とつのる様子なれば、きょうはこの金谷の宿に一泊。」とお供の者どもに言いつけた。
けれども、乱暴者の若殿には、式部のこの用心深い処置が気にいらなかった。