Classici giapponesi con furigana
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しんしゃくしょこくばなし
新釈諸国噺
Leggi 新釈諸国噺 (しんしゃくしょこくばなし) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 93.562 caratteri · 179 schermate
人魚を見たのかしら、射とめたなんて嘘だろう、夢じゃないか、と無人の白皚々の磯に立ってひとり高笑いしてみたり、ああ、あの時、自分も船の相客たちと同様にたわいなく気を失い、人魚の姿を見なければよかった、なまなかに気魂が強くて、この世の不思議を眼前に見てしまったからこんな難儀に遭うのだ、何も見もせず知りもせず、そうしてもっともらしい顔でそれぞれ独り合点して暮している世の俗人たちがうらやましい、あるのだ、世の中にはあの人たちの思いも及ばぬ不思議な美しいものが、あるのだ、けれども、それを一目見たものは、たちまち自分のようにこんな地獄に落ちるのだ、自分には前世から、何か気味悪い宿業のようなものがあったのかも知れない、このうえ生きて甲斐ない命かも知れぬ、悲惨に死ぬより他は無い星の下に生れたのだろう、いっそこの荒磯に身を投じ、来世は人魚に生れ変って、などと、うなだれて汀をふらつき、どうやら死神にとりつかれた様子で、けれども、やはり人魚の事は思い切れず、しらじらと明けはなれて行く海を横目で見て、ああ、せめてあの老漁師の物語ったおきなとかいう大魚ならば、詮議もひどく容易なのになあ、と真顔でくやしがって溜息をつき、あたら勇士も、しどろもどろ、既に正気を失い命のほどもここ一両日中とさえ見えた。