Classici giapponesi con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
身体が浮き上っていくのか沈み込んでゆくのか分り難い。日光のあたっている胸が気だるく大儀になると、「さア」と矢代は云いつつゆるりと立った。木蔭の所どころに塊っているベンチの人も、物云う者は誰もなかった。どの樹も小鳥の声の泉かと見える。幹を降り辷って来る栗鼠だけが、氷河の襞に湧く虫のように自由にぱちぱち這い競って動いていた。
「お昼から山へ登りましょうね。あたし、写真機を買おうかしら。」
千鶴子ももう云うことがないのだと思うと、一口の無意味な彼女の言葉も、両手で受けたく清らかに矢代には見えるのだった。
「あなた写真お上手ですか。」
「それが駄目なの。でも、撮れればいいわ、きっと後で失敗ったと思うんですものね。」
と身の廻りでほッと開く連翹のような鮮やかさで笑む千鶴子を、樹陰からこぼれ落ちる日光の斑点の中で、矢代はただ今は頷くばかりである。
写真機を千鶴子一人に買わせるよりも、二人で買う方が旅の記念にもなると思い、矢代は等分に金を出し合うことを主張して、ある店で手ごろなシュウパアシックスを買った。
「あたし、この写真機いただくわ。でも、それはあなたとお別れするときでいいんですのよ。