Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate

Aozora Bunko

「あのね、あたしの知り合いのお医者さんで、ここの波止場で夜遅く船へ一人で帰って来たら、倉庫の所から出て来た男が、ピストルを突きつけて、お金を出せって云ったことがあるんですって。きっとあのあたりでしょうね。」

と千鶴子は真下に延びている黒い倉庫の方を指差した。千鶴子の考えていたことは、そんなことであったのかと矢代はがっかりとしたが、しかし、今にも危い言葉の出ようかとじっと自分の胸を見詰めていた矢代にとっては、これは何よりの救いだった。

「じゃ、僕があなたにお世話されて来たあのへんですね。どうしましたその人?」

「お金を少しやって、大きな金は船にあるから船へ来いと云ったら、梯子もついて昇って来たとか云ってましたわ。ここじゃ、撃たれればそれまでですものね。」

矢代は笑いにまぎらせながらも、軽いこのような話に聞き入る自分をまだ結婚の資格はないものと考えた。

「しかし、ここにいると奇妙なことも起るでしょうが、たしかにまともに理解出来そうもないことばかり、ふいふいと考えるようになりますね。僕もさっきから、どうも奇怪なことばかり頭に浮んで来て困りましたよ。これでパリへ行ったらどんなに自分がなるのか、想像がつかなくなって来ましたね。