Classici giapponesi con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
」
「パリでお別れのときも、そんなことを仰言ったわ。あのときのこと、気にかかってときどき考えるんだけど――でも、そんなものなのかしら。」千鶴子は紅茶を匙で掬っては滴し滴しやはり沈んだ。
「何も僕はあなたの考えを、邪魔するつもりじゃありませんがね。」
「でも、帰ってからこんなになるなんて、――」
一言いいそこなうと、こちらのなごやかさとは反対に、忽ち翳りの来るものが、争われずまだあったのだと矢代は思い残念だった。
「僕は東京へ着いた夜、自宅へ帰る前にあなたのところへ行ったんですよ。」
「まア、そう。」
不思議そうに矢代を眺めている千鶴子の眼もとに微笑が動いた。
「しかしね、そこはどういうものか、眼が醒めたみたいで、こりゃ、眠っていたときとは違うんだと気がついたというわけですよ、それだけのことさ。」
「それだけのこと?」千鶴子はまた不服そうに白んで訊ねた。
「つまり、云いようのないことですよ。だって、どうしてそんなことが僕らに云えますかね。君も僕も知ったことじゃない、おかしなものが、ふッと出て、そのまま消えたのか、まだいるのかも分らないんだからなア。まア、疲れが癒れば分りますよ。