Classici giapponesi con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
矢代はその喜ぶ父の心情を想像すると、今こうしてここで男爵と自分の並んでいることが、すでに孝行をしていることになっているのだと気がついて、思わぬ明るい気持ちの差し込むのを覚え久しぶり若若しい青年に立ち還って来るのだった。そして彼は父のその喜びの移り映じて来た自分の今の興奮の仕方を、これを僅かに自分から見つけた価値のように思われ、横の男爵にはそれも早や無い富貴の寂しさばかりが攻めよっているのかもしれぬと、男爵の日日の生活をあれこれと想像して、反対にますます自分の幸福を的確に感じとった。
日曜で空の上の方には風があるらしかったが、庭の樹樹は静かだった。下枝の間を影のように鶯が移り渡っていた。植えてから五六年は実の成らなかった黐の樹に、赤い小粒の実が成り始めた年から、よく小禽類の来るようになったのも、今年はそれが目立って増えた。まだ笹鳴きの若い鶯ながらも、真近く見る姿は絶えず鋭く伸びたり膨れたりした。矢代は、午後からは長く忘れていた畑を打ってみようと思いながら、火鉢に片手を焙り、鉄瓶の鳴るのを聞いていると、ふとある貴重なものの過ぎ通っている静かさを覚えた。