Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょかんについて

旅館について

山本 周五郎

Leggi 旅館について (りょかんについて) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7912 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

ゆうべ飲んだ座敷の窓外には、枝ぶりの美しい若木の樫があった。あの木で位置を判断すればいいじゃないか、簡単なことだと元の座敷へ帰った。窓から覗いてみると、その樫の若木がすがすがしく枝をのばしている。私はその枝ぶりをつぶさに見さだめてから、暗算で方角をきめ、廊下へ出てそっちへいってみた。するとまた、例の嬌かしい男女二足のスリッパのあった座敷にゆき着いたのであった。やんぬるかな、と私は思い、行衛をくらました三人の同伴者に心の中であくたいをついた。

「どうして旅館をこんなに大きくするんだ」と私は憤然と独り言を云った、「同じ家屋の中に泊りながら、つれと会うこともできないとはふざけたはなしだ」

廊下を曲ったところで、こんどは若い番頭さんに出会った。どうしてみのがすことができよう、私は彼を呼び止めた。

「きみ、済まないがね」と云って私は自分の顔をその若い番頭さんの前へ差出し、私の人相をよく相手に認識させてから、とりいるように微笑した、「――ぼくのつれがどこかにいるんだが、どこにいるかわからないかね」

その若い番頭さんはあいそよく頬笑み、私の顔を眺めてから首を振った。