Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

Leggi 日日平安 (にちにちへいあん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.297 caratteri · 56 schermate

Aozora Bunko

菅田平野はその火が板に移って、天床へ燃えつくのを待っていた。だが、とつぜん襖があいて、「あっ」と叫ぶ声がした。さっき寝ているのを見に来たから、そっちのほうは安心していたので、襖のあくまで人の来たことに気がつかなかったのである。

「どうしたんですその煙は」

菅田平野は唐紙を閉めながら振返った。部屋の中にも思ったより多く煙がもれていた。その煙越しに、渡辺という若侍の立っているのが見えた。

「なんです、火事ですか」

こう叫びながら、若侍が入って来ようとした。菅田平野はそこにある刀を取り、ひき抜いて相手の前へつきつけた。

「声を立てるな」と彼は云った、「――こっちへ入ってその襖を閉めろ、騒ぐと斬るぞ」

若侍は飛鳥のようにとびのき、「火事だ」と絶叫しながら廊下を走っていった。

菅田平野は煙に咽せながら、刀の下緒を外して襷にし、袴の股立をしぼった。戸納の中では天床板のぱちぱちと焼けはぜる音がし、唐紙の隙間からは濃密な煙があふれ出て来た。彼は燧袋と旅嚢を持って、こんこんと咳きながら廊下へ出た。

廊下の左手から三人ばかり、血相の変った侍たちが走って来た。菅田平野は右へ、奥座敷のほうへ走り、中庭へとびだした。