Classici giapponesi con furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Leggi 日本の怪談 (ぎじんのすがた) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.030 caratteri · 115 schermate
船は遠州灘の戸島の側を通っていた。船頭の酔がやや覚めかけて話がきれぎれになりかけた時、鼠色に見える白帆の影になった空中に、ふうわりとしたものの形が何処からともなく見えて来た。雲霧か何かが風のぐあいで吹き飛ばされて来たものだろうと、舵手(かこ)の一人がそれを見て思った。そのうちにその雲霧のようなものの影は、ふわふわと舵柄の傍へ降りて来た。その影の中には蒼白い人の顔があった。船頭が直ぐそれに眼を注(つ)けた。船頭は煙管を逆手にかまえた。
「船幽霊が来やがった」
二人の舵手(かこ)は舵柄にすがったなりで起きあがれなかった。
「船幽霊が来たぞ、船幽霊が来たぞ、壮い奴等、灰を持って来い」
船頭の大きな声がまた響いた。
「いや、俺は船幽霊じゃない、騒いでくれるな」
色の蒼白い背の高い男が船頭の前で穏かに云った。
「船幽霊でなけりゃ、何んじゃ」
「俺は、土州安芸郡(ごおり)崎の浜の孫八と云う船頭じゃ、あと月の廿日の晩、この傍を通っておると、大暴風雨(じけ)になって、海込めに遭い、二十人の乗組といっしょに死んでしまったのじゃ、で、頼みがあってやって来た」
「頼みと云うのはどんなことじゃ、俺にできることなら頼まれてやろう」