Classici giapponesi con furigana
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しゅんせつ
春雪
久生 十蘭
Leggi 春雪 (しゅんせつ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.672 caratteri · 23 schermate
水に漬って立っている。
眼をすえて見ていると、牧師は右の掌を柚子の背中の真中あたりにあて、いきなり、あおのけにおし倒した。柚子の身体は、一瞬、水に隠れて見えなくなったが、ほどなく頭から水をたらし、なにかの絵にあった水の精の出来損いのような、チグハグな表情であらわれてきた。
馬鹿なことをするものだと、池田が腹をたてているうちに、また貧弱なオルガンが鳴って、それで正面の扉が閉まった。
「すみました。ありがとうございました」
柚子は服を着て出て来たが、血の気のない顔をし、歯の根もあわないほど震えている。車が家へ着くまで、充ち足りたような、ぼんやりとした眼つきでなにか考えているようだったが、震えはとまらなかった。
これが肺炎の原因になったことはいうまでもない。その晩から熱をだし、規定どおりのプロセスを経て、四月十三日、夜の十一時四十分、大塚から高円寺まで焼かれた空襲の最中に息をひきとった。死ぬ二日前、洋銀まがいのつまらない指輪を左手の薬指にはめ、これお友達から記念にもらったものですから、死んだら、このままで焼いてくださいといったので、そのとおりにした。
「では、池田さん、どうぞ」