Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はる

春

岡本 かの子

Leggi 春 (はる) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.864 caratteri · 48 schermate

Aozora Bunko

その時、加奈子は、何故か疲れて京子のピアノを聴いて居た。ピアノの上の花瓶に、真紅の小薔薇が一束挿してあった。時折この薔薇が真黒な薔薇に見えると京子は怖えた様子で話した。あの頃から、京子の心身には、今日の病源が潜んでいたものらしい。それから或る年の暮、青山墓地通りの満開の桜の下を二人は歩いて居た。すると前方から一列の兵士が進んで来た。近づいて来ると兵士達は、靴音をざくざくさせながら、二人にからかい始めた。二少女は慌てて道を避けようとした。その時、列の中の一人の兵士が、かちゃりと剣を鳴らして二人にわざとらしい挙手の礼をした。と、京子は狂奔する女鹿のように矢庭に墓地を目掛けて馳け込んだ。その時、京子の手が鞭のように弾んで、加奈子の片手を引き攫った。一丁ばかり墓地の奥まった処に少し開けた空地があった。腰かけられる石台が三つ四つ、青楓の大樹が地に届くまで繁った枝を振り冠っていた。京子は茲へ来て佇ち止ると、片手で息せく加奈子の手を持ち、片手で繁る楓の枝を掴んだ。道の兵士達はタンクのように固り乍ら行き過ぎようとして居た。京子は楓の枝の間からぎらぎら光る眼で兵士達を見据えた。