Classici giapponesi con furigana
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はる
春
Leggi 春 (はる) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9519 caratteri · 20 schermate
藤の花は苔ばんだ木々の間になぜか前よりもほのぼのとしていた。彼女は一瞬間心の中に昔の「猿」を髣髴しながら、曖昧に「そうねえ」を繰り返した。が、辰子は「そうねえ」くらいに満足する気色も見せなかった。
「じゃ会って下さるわね。大村の下宿へ行って下さる?」
「だって下宿へも行かれないじゃないの?」
「じゃここへ来て貰いましょうか? それも何だか可笑しいわね。」
「あの人は前にも来たことはあるの?」
「いいえ、まだ一度もないの。それだから何だか可笑しいのよ。じゃあと、――じゃこうして下さらない? 大村は明後日表慶館へ画を見に行くことになっているの。その時刻に姉さんも表慶館へ行って大村に会っちゃ下さらない?」
「そうねえ、わたしも明後日ならば、ちょうどお墓参りをする次手もあるし。……」
広子はうっかりこう言った後、たちまち軽率を後悔した。けれども辰子はその時にはもう別人かと思うくらい、顔中に喜びを漲らせていた。
「そうお? じゃそうして頂戴。大村へはわたしから電話をかけて置くわ。」
広子は妹の顔を見るなり、いつか完全に妹の意志の凱歌を挙げていたことを発見した。この発見は彼女の義務心よりも彼女の自尊心にこたえるものだった。