Classici giapponesi con furigana
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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
Leggi 昼の花火 (ひるのはなび) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7030 caratteri · 15 schermate
だが、あの大正時代にできたという、老朽のビルの屋上、そこに行く道と雑沓、貧しげな匂いを吹き上げてきた風、緋毛氈の敷かれていた俄か造りの涼み台は、そして浴衣がけの手に団扇をもった日本人の男女たちは、はたして少女の記憶にのこったことだろうか。
いや、のこることはあるまい。ましてその夜、少女の周囲に犇めいていた日本人たちの視線を、憶えているはずはあるまい。もとより、その群衆に混って、勝手な想像をめぐらせた一人の青年の存在など、それと知ろうはずもないのだ。
そして、もしかしたら、少女にとり東京とは、いや、日本とは、一夜の花火の記憶だけかもしれない。花火だけが、そこで過した一つの季節の記憶であり、ただ一つのそのイメージであるのかもしれない。成人した少女は、いうだろう。――え? ハナビ? 日本のハナビなら、私、六つのときトウキョウで見ましたわ。ええ、よく憶えています。それは、とても素晴らしかったわ。……でも、そのときのことは、もう憶えてはいません。ほかのことは、もうぜんぶ忘れました。トウキョウについても、日本についても。……憶えているのは、ハナビだけです。夜の空に、いつまでもいつまでも咲きつづけた、綺麗だったハナビのことだけ。