Classici giapponesi con furigana
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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
Leggi 昼の花火 (ひるのはなび) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7030 caratteri · 15 schermate
この一年間、彼は花火の夕にとった姿勢のまま、女とつきあってきていた。強いて自分を抑えたのでも、その逆でもなかったのだが、何故か手ひとつ握ろうという気にならなかった。二人の距離は、いつも同じだった。だが、彼は、ようやくその満足に倦いてきていた。
しかし、いま女の示したその期限は、急に、彼を得体の知れぬ幸福に火照るような気持ちにした。女といっしょにいることの幸福を、彼は、かつてこんなに深く、たしかなものとして感じたことはなかった。
奇妙な安らぎと、充実とが、彼に来ていた。期限の意識が、慣れて見失いかけていた女の存在を、よみがえらせたのだろうか。それとも、これは狡猾な解放のよろこびなのだろうか。
「お祝い、あげてもいいの」
女の耳のうしろを括っている、木目の浮いた紺のタフタを、目でたどりながら彼はいった。
答えはない。
微笑をつくりつけたまま凝固したような女の頬は、白粉が浮いて、一瞬、ひどく醜かった。
醜い。――しかし、かつてこれほど親身に女の肌を感じた記憶はない。彼女への愛を、素直に信じられた記憶もない。
だが、彼には、このまま深入りも仲違いもせず、秋の別離を迎えるだろう、そういう自分たちがわかっていた。