Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひるのはなび

昼の花火

山川 方夫

Leggi 昼の花火 (ひるのはなび) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7030 caratteri · 15 schermate

Aozora Bunko

そのようにして、僕はこの女への愛を、この女との季節を、完成させることしかできぬだろう。

女は、きっと良い妻になるだろう。良い母になるだろう。――でも、それは僕の幸福と同じではないか。手ひとつ握らず、唇ひとつ重ねず、身をはなしたまま彼女といっしょに時をすごしている幸福。僕は、彼女の中でそんな一つの季節を生き、そして僕の愛は、二人の距離を蹂躪し破壊するそれとは性質が異るのだから。

彼はそう思った。これは遁辞だろうか。彼は女の横顔を強くみつめた。

「……おめでとう」

低く、彼はいった。

グラウンドに止っていた女の眸が動いた。それが彼に帰ったとき、女はもう、ふだんの表情で笑っていた。

「今度、いつ帰省なさるの」

「夏休みになったら、すぐ」

「そう。……じゃ、川開きには、もう行けないわね」

女は、前髪にのせた手巾を下ろし、二つに折る。白い指先きが、丹念に、いくども折り直しながら手巾を小さく畳んでゆく。彼は、ふと仔細に、それを眺めていた。

「……今年もあるでしょうね。花火大会」

ぼんやりと、彼は女の声を聞いた。金髪の少女のことを想った。

たしかに、花火はあの金髪の少女の記憶にのこったろう。