Classici giapponesi con furigana
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こよみ
暦
壺井 栄
Leggi 暦 (こよみ) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.332 caratteri · 112 schermate
重吉は自分にも見える場所へ実枝を坐らせ、器用に動くその手許を見て暮した。そして時には回りにくい口でいっぱしの意見をのべることさえあった。クニ子はクニ子で家の回りを貰いあつめた草花で埋めるし、重吉はそんなことで退屈も感じないのであろうが、今までとちがって何一つむりをいうでなく、実枝のすることを眺め、実枝のしてくれることを受け、自分をとりまく釣道具などを手にもとらずにぼんやりとして寝て暮しているのを見ると、退屈を感じ、癇癪を起すほどの気持のはりがだんだん失われてゆくのかもしれないと、実枝はいとしくなるのであった。
そんな風なある日、村の小学校の新校舎の落成で、折詰に一合の酒が添えられて、村じゅうの家々に配られた。実枝が茶目っ気を出して、それに盃を添えてだすと、初めはためらっていた重吉も祝い酒ということに気を軽くしたらしく、床の上に起きなおって嬉しそうにそれを受けた。三年ぶりであった。盃を口にした重吉は、しばらくは口をつぐみ、口じゅうにその酒の味をゆっくりと沁みわたらせるかのようにじっと含んでいて、やがてぐっとうなずくようにして飲みこんだ。その格好は達者な時の晩酌にも時々やっていた、あの最初の一口と同じ念を入れた味わい方であり、よくクニ子や実枝が真似ていたそれであった。