Classici giapponesi con furigana
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しょきかん
書記官
川上 眉山
Leggi 書記官 (しょきかん) di 川上 眉山 (かわかみびざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.182 caratteri · 36 schermate
一
笆に媚ぶる野萩の下露もはや秋の色なり。人々は争うて帰りを急ぎぬ。小松の温泉に景勝の第一を占めて、さしも賑わい合えりし梅屋の上も下も、尾越しに通う鹿笛の音に哀れを誘われて、廊下を行き交う足音もやや淋しくなりぬ。車のあとより車の多くは旅鞄と客とを載せて、一里先なる停車場を指して走りぬ。膳の通い茶の通いに、久しく馴れ睦みたる婢どもは、さすがに後影を見送りてしばし佇立めり。前を遶る渓河の水は、淙々として遠く流れ行く。かなたの森に鳴くは鶇か。
朝夕のたつきも知らざりし山中も、年々の避暑の客に思わぬ煙を増して、瓦葺きの家も木の葉越しにところどころ見ゆ。尾上に雲あり、ひときわ高き松が根に起りて、巌にからむ蔦の上にたなびけり。立ち続く峰々は市ある里の空を隠して、争い落つる滝の千筋はさながら銀糸を振り乱しぬ。北は見渡す限り目も藐に、鹿垣きびしく鳴子は遠く連なりて、山田の秋も忙がしげなり。西ははるかに水の行衛を見せて、山幾重雲幾重、鳥は高く飛びて木の葉はおのずから翻りぬ。草苅りの子の一人二人、心豊かに馬を歩ませて、節面白く唄い連れたるが、今しも端山の裾を登り行きぬ。