Classici giapponesi con furigana
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つきよのあとさき
月夜のあとさき
津村 信夫
Leggi 月夜のあとさき (つきよのあとさき) di 津村 信夫 (つむらのぶお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1719 caratteri · 4 schermate
「戸隠では、蕈と岩魚に手打蕎麦」私がこのように手帖に書きつけたのは、善光寺の町で知人からきかされたのによる。
岩魚は戸隠山中でもそう容易には口に這入らない。岩魚釣を専門にしている、さる農家の老人をひとり知っているが、その他に所謂素人で、ひそかに釣に出るような人もある。
一日歩いて骨折ってみても、まずこんなものですよと云って、石油の空缶をのぞかせて呉れたのは、山の写真屋の隠居であった。空缶のなかには膚の美しい岩魚が、僅か二疋だけ泳いでいるにすぎなかった。
水の綺麗なところを選ぶこの川魚は、いささか神秘に属するものかもしれない。
足の悪い老人は、今朝から牧場のあたりから川に沿ってきたのだと云って、額の汗をふいていた。
「土地の人はこうして水を飲むのですよ」と云って、笹の葉を一枚舟の形に折って、私にも美しく澄んだ水を飲ませてくれた。
秋には坊の食膳にかならず蕈の類が上される。ふかい秋のもの哀しい風味がある。
晩夏の一日、私が奥社に詣でたとき、逆川のほとりの茶店に、新聞紙の上に一杯黄色い小さな蕈を干しているのを見た。傍にはグリムの物語にでも出てきそうな老婆がぼつねんと坐っていた。