Classici giapponesi con furigana
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すだま
木魂
夢野 久作
Leggi 木魂 (すだま) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.668 caratteri · 46 schermate
「イヤ……俺が登って行く……」
狼狽した彼はシャガレた声でこう叫ぶと、一足飛びに線路の横の溝を飛び越えて、重たい鞄を抱え直した。四十五度以上の急斜面に植え付けられた芝草の上を、一生懸命に攀じ登り初めたのであった。
それは労働に慣れない彼にとっては実に死ぬ程の苦しい体験であった。振返るさえ恐しい三丈あまりの急斜面を、足首の固い兵隊靴の爪先と、片手の力を便りにして匐い登って行くうちに、彼は早くも膝頭がガクガクになる程疲れてしまった。崖の中途に乱生した冷めたい草の株を掴むたんびに、右手の指先の感覚がズンズン消え失せて行くのを彼は自覚した。反対に彼の顔は流るる汗と水洟に汚れ噎せて、呼吸が詰まりそうになるのを、どうする事も出来ないながらに、彼は子供の手前を考えて、大急ぎに斜面を登るべく、息も吐かれぬ努力を続けなければならなかった。
……これは子供に唾を吐いた罰だ。子供に禁じた事を、親が犯した報いだ。だからコンナ責苦に遭うのだ……。
といったような、切ない、情ない、息苦しい考えで一杯になりながら、上を見る暇もなく斜面に縋り付いて行くうちに、疲れ切ってブラブラになった足首が、兵隊靴を踏み返して、全身が草のようにブラ下がったままキリキリと廻転しかけた事が二三度あった。