Classici giapponesi con furigana
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まつかぜのもん
松風の門
山本 周五郎
Leggi 松風の門 (まつかぜのもん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.862 caratteri · 26 schermate
治右衛門は彼の亡父と親しい人で二男二女があり、その長女うめと彼とは親たちに依って許嫁の約を結ばれていた。
池藤八郎兵衛という名が、ああ、あの神童の小次郎か、と人々の記憶に甦えってきたのは、三年まえそのうめとの婚礼が行われてからのことだった。婚礼はめでたく行われたが、彼はうめを近づけなかった。夫婦は別棟に住んだまま半年あまり経った。それで遂にうめは耐兼ねて実家へ逃げ帰った、尤も治右衛門がそれを許す筈はなく、直ぐ自分で連戻したうえ、八郎兵衛の存意をたしかめた。彼は別に他意のないようすで、――うめはまことに善き妻です、拙者が未熟者なので御迷惑を掛けました。そう云ってうめを引取った。
けれどその後も矢張り夫婦とは名ばかりの生活が続いた。うめを嫌っているのかと思うとそうでもなし、なんのためにそんな不自然な生活をするのか誰にも分らなかった。神童と云われただけにどこか人と違っている。なにか体に欠陥でもあるのだろう。それともまだ子心が失せないのか。そんな批評が家中の人々のあいだに弘まった。……然し八郎兵衛はまるで気にもかけず、極めて無関心な、ぼやっとしたようすで日を暮していた。