Classici giapponesi con furigana
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けいまのげんそう
桂馬の幻想
Leggi 桂馬の幻想 (けいまのげんそう) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.784 caratteri · 28 schermate
茶店の娘の顔に見た四五桂の謎をとくためにである。勝負師の中でも彼は特に執念の強い方であるし、あの謎によせた彼の執着は一度は彼をこの地に再来せしめるに充分なものだと思われたからである。
野村はある日の散歩に例の橋を渡って山上へ登ってみた。そして茶店に休息した。茶店は何事もなかったふうに思われた。土間をはいって盤面右下隅の位置にあるという茶店の棚も木戸が語ってきかせたとほぼ同じで、空ビンの代りに新しいサイダーだけが十本ほどあった。そして現れたのも例の娘であった。娘は彼が何者か気づかぬ様子であった。野村はむかし木戸が娘に話しかけたと同じように、サイダーをのみ終えてから、云った。
「去年の十月はじめごろ、二十円のカタにセーターをぬいで渡した釣人を覚えていないかね」
その瞬間にまさしく野村も見たのである。木戸の云った例の四五桂と同じものを見たと思った。むろんそれは野村にとっては四五桂ではない。また木戸があるいは真剣勝負の剣客のスキのないきびしさと云ったものともややちがう、それは世の常の人のものとはちがっていた。驚愕がないのだ。そして、怖れがないのだ。そこに溢れているものは怒りであり、逞しい闘志であった。