Classici giapponesi con furigana
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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Leggi 桑の木物語 (くわのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.815 caratteri · 79 schermate
「おまえが信じるだけでおれの寿命が延びると思うのか」
「私はいつぞや祖父からこのようなことを聞きました」悠二郎は構わずこう続けた、「――人間は生きた年数だけで、長命か短命かがきまるものではない、土蔵の中で百年生きるのと、市中で三十年生きるのと、その経験したことを比較すれば、市中で三十年しか生きないほうが、事実は長命したといえるではないか」
正篤は眼をつむり、息をひそめるようにした。悠二郎は言葉をつよめて云い継いだ。
「私は祖父の申すことがそのときはわかりませんでした。しかしまもなく合点がまいったのです、殿の御身分としては、殿はこれまでにもかなり桁外れな御経験をなさいました、――庶民と同じ姿になって、浅草の見世物もごらんになり、大川へ舟を出して、自由に泳ぎもし釣りもあそばしました、向島から小梅あたりの悪童どもと、いっしょに遊んだり喧嘩をしたり、……他の方々、御殿の中だけで成長なさる方々には、とうてい見も聞きもできない経験をなすっておいでです。そうではございませんでしょうか」
悠二郎は思うことを的確に云えないもどかしさにあせり、肩を揺すったりせかせかと膝を撫でたり、そしてしきりに吃った。