Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate

Aozora Bunko

甲斐の額に皺がよった。彼はその手紙を火桶で焼き、火箸でうち返しながら、灰になるまで見まもっていた。

伊東新左衛門は、高野兵衛という少年を供に伴れていた。席のとりもちには、宿のあるじ佐藤仁右衛門と娘のお雪が当り、お雪は二曲ほど琴を弾いて興を添えた。

新左衛門は肥えてみえるが、それは健康な肥えかたではなく、誰の眼にもむくんでいるのだということがわかった。眉が細く、きれながの眼はうるみを帯び、唇は乾いてささくれていたし、皮膚の色も白けて艶がなかった。新左衛門は酒を飲まない。甲斐もまだ医者に止められているので、食事は早く済んでしまった。

宿のあるじと娘が去り、茶菓がはこばれると、新左衛門は兵衛にさがっておれと云い、甲斐に向かって人ばらいを求めた。給仕に坐っていたのは塩沢丹三郎で、甲斐が振向くと、礼をして出ていった。

「じつは、国老就任の交渉を受けたので」と新左衛門が云った。

これは甲斐にも思いがけない言葉だった。伊東は着座には相違ないが、病弱のため、これまで役らしい役を勤めたことがない。それをいきなり国老に推すというのは、殆んど考えられないことであった。