Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate

Aozora Bunko

ささやき

宇乃は微笑した。

「私が祝言することを知っているか」と甲斐が云った。

宇乃は「はい」と頷いた。甲斐を見あげている眼にも、かげろうのゆれるようなその微笑にも、なんの変化もなく翳もなかった。

「花がよくうつる」と甲斐は云った、「きれいだ」

宇乃はまた微笑した。

「まもなく江戸へのぼる」と甲斐が云った、「なにか云いたいことがあったら、遠慮なく云ってごらん」

「いいえ、なにもございません」と宇乃はかぶりを振った、「ただ、御番があきましたら、早く帰って来ていただきとうございます」

「私はいつも宇乃のそばにいるよ」

「はい」

「此処にいても、江戸へいってもだ、わかるか」

「はい」と宇乃は頷いた。

甲斐もそっと頷き、もう少し登ろうと云って、手をさしだした。宇乃はすなおに、その手に縋った。

二人はゆっくりと坂道を登っていった。

ささやき

その朝、材木町河岸の家を、野中又五郎といっしょに出た新八は、隣りのお久米からむすび文を渡された。

お久米は格子口の壁際に隠れてい、又五郎がとおり過ぎるのを待って、あとから来る新八に、格子の桟のあいだから、すばやくそれを渡したのである。新八はそれを袂に入れ、いそいで又五郎のあとを追った。