Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
「もうそんな文を付けられたことがあるでしょ」とおみやは横眼で彼を見た。
「ばかなことを」と黒田は云った、「私は酒井家に召出されてようやく二百日ぐらいにしかならないし、身分はまだ足軽です」
「でも御勘定部屋へ出ていらっしゃるわ」
「それは組頭の御好意で、身分はまだ足軽なんです」と黒田はきまじめに云った、「無事に勤めができれば士分になれるが、貴女がたがそんなことで騒いだりすると、士分になるどころか、扶持を召放されるかもしれない、どうかそんな評判はしないようにして下さい」
「このうちよ」おみやは彼に振向いてから、先に立って茶屋の中へはいった。
茶屋の土間をぬけ、槇の生垣のある路地をゆくうちに、男はふと表情を変えた。それは一瞬のことであるし、前をゆくおみやにはもちろん見えなかったが、明らかに、人がなにかを決意するときの表情であった。
離れのその一棟は、まださっきのまま片づけてなかったとみえ、茶屋の老婆はひどく慌てて、三棟ある建物の、まん中の一と棟へ、かれらを案内した。
「いまのことを頼みます」と黒田は老婆が去るのを待ちかねて云った、「本当に扶持に放れでもすると困るのですから」