Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
そうしていま、おみやが宿下りで帰って来、彼をさそい出そうとするいま、新八には拒絶できないことがわかった。彼は自分を罵り、卑しめながら、自分の内部からつきあげてくる欲望が、おみやの誘惑に抵抗できないことをはっきりと認めた。
――まだそうきまったわけではない。
新八は心のなかで云った。どこかで食事でもするつもりかもしれないし、いざとなったときはっきり態度をきめればいい。そう自分に云い含めながら、彼は野中の家族の顔を見ることができなかった。
「いってらっしゃいませ」お市は送りだしながら云った、「なるべく早くお帰り下さいましね」
新八は黙って頷いた。
二人が路地へ出ると、隣家のお久米が格子越しに声をかけた。おみやはそっけなく挨拶をし、新八をせきたてて通りへ出た。
「逢いたかったわ」おみやはすばやく囁き、袂を直すふりをして、ちょっと新八の手を握った。
「駕籠がいいわね」
「どこへゆくんですか」
「向島よ」とおみやが云った、「このあいだ、お屋敷のお中のお供でいった、いいところがあるの、長命寺というお寺のそばよ」
おみやはうきうきしたようすで、ながしめに新八を見た。新八は赤くなって、眼をそらした。