Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
「云って下さい、では盟約はどういうことになるんです」
「つまりなかったということだろうね」
「なかった、ですって」
「当然、秘すべきことを、そうたやすく人に話すとすれば、それは秘すべき必要のないことであり、つづめていえば、そんな盟約はなかったということになるだろう」
「それはまじめですね」
「酔っているのは、七十郎だ」
「原田甲斐――か」と七十郎は鼻を鳴らした。
彼は手を伸ばして、八重桜の花を摘み取り、それを口へ入れて噛みながら、汁椀の蓋でつづけさまに飲んだ。
「貴方は饒舌りすぎる」と七十郎は云った、「それもうまく饒舌りすぎる、まえにはそんなではなかった、原田甲斐という人物はたいふくで、ばかにされようがどうしようが、決して弁明もしないし自己主張もしなかった、それがいまはじつにうまく、じつに巧みに、人を非難し、自分を弁護する、――額に皺をよらせて穏やかににっと笑う、あのなつかしい微笑はみられなくなった、原田さん、貴方はすっかり変りましたよ」
「質問は終りらしいな」
「まだ二つあります」
「私はもうでかける時刻だ」
「なに、雅楽頭なんぞ待たせておきなさい」
七十郎はまた二杯飲んだ。