Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
甲斐は知らないと云った、「なにかおぼしめし違いでございましょう。八十島主計などという者は知りもせず、名を聞いたこともございません」
すると雅楽頭の顔が赤くなった。彼はその大きな眼で、甲斐をにらみ、だが皮肉な、嘲弄するような声で云った。
「おれはその男に、湯島あたりで会った、湯島あたりのしゃれた隠宅で、その男はそこに女をかこい、家政が苦しいにしては、なかなか風流にくらしているようだ、おれは酒の馳走になったが、いとまがあったらまた訪ねようと思う」
甲斐はまったく無表情に聞いていた。
「こんど訪ねたとき」と雅楽頭はつづけた、「その男はおれに会うだろうか、それとも鼬のように逃げるだろうか、原田、そのときそのほうならどうするか」
「御難題でございますな」と甲斐は答えた、「その人間を知らず、したがって勇怯の質も存じませんが、仮に私と致しましたら」
「どうする」
「おそらく、鼬のように逃げることでございましょう」
「おれに会わぬか」
「小身の又者では、御威勢なみならぬ厩橋さまの御前はおそれ多くもあり、また」と甲斐は言葉を切った。
雅楽頭は「また、とはなんだ」と云った、甲斐は微笑して、いや申しますまい、と答えた。