Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
と云った。
蘇苔付きの石燈籠に灯がはいっていて、それがときおりまたたくのが見えた。油が少なくなったのであろう。丹三郎が油壺を持っておりてゆき、油をさして戻ると、その灯はまたたきをやめて明るくなり、植込のつつじの花が浮きあがるようにみえた。
殆んど一刻ちかく経ってから、甲斐はやおら裏座敷へいった。それはかつて茂庭周防と密会した小座敷で、男はまだ覆面のまま、酒を飲んでいた。甲斐はおくみに眼くばせをしながら坐り、おくみは出ていった。
男は盃を置き、覆面をぬごうとした。
「よければそのまま」と甲斐が云った。
男は手を止めて甲斐を見た。どうしようかと迷ったらしい。甲斐はまったく無関心に、用件を聞きましょう、と云った。男は不決断に覆面をぬいだ。柿崎六郎兵衛であった。彼はふところから細長くひらたい、袱紗包みを出し、それをひろげて甲斐のほうへ押しやった。
「これをごらん願いたい」と六郎兵衛は云った。
袱紗の中には書状のようなものがあった。甲斐はちらと眼をくれただけで、興もなげな表情で、どういうものかと訊いた。とにかく御披見を願います、と六郎兵衛が云った。いや、と甲斐は静かにかぶりを振った。