Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate

Aozora Bunko

新八は女の腕を放そうとした。おみやはひっしにしがみつき、意味のないことを叫びながら、彼をひき戻そうとした。新八はよろめいた。その手を思いきってひと振りすればいいのだ、しかしその力は出て来ず、却って、よろめく女を支えるかたちになった。おみやは両腕を新八の頸に巻きつけた。

新八は自分が崩れおちるのを感じた。おみやの両腕が頸に絡みつき、袖が捲れて裸になっているその腕が、自分の膚へじかに触れ、彼女の唇が、自分の唇をぴったりとふさいだとき、それまで辛うじて支えていた自制力が、溶けるように崩れてゆくのを感じた。

「放して下さい」

新八は顔をそむけ、彼女の腕をつかんで力まかせにもぎ放した。おみやが「痛い」といった。新八は女を突きとばし、障子をあけて濡縁へ出た。おみやは膳の上へ転んだらしい、皿や鉢の割れる音とともに「新さん」という叫び声が聞えた。

「待ってちょうだい」

新八は草履をはいた。するとおみやが濡縁へ出て来て、哀願するように云った。

「あたしを置いてゆかないで、新さん、お願いよ、戻って来てちょうだい」

新八は梅林のところで立停った。

「戻って来て」とおみやが云った。