Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 146.773 caratteri · 294 schermate
「どうかなすったの?」
とお浜が心配そうにたずねた。
「ううん、――」
と、次郎はほとんど無意識に首をふった。それから、急に思い出したように、
「唯今。」
と、みんなに挨拶して、そのまま、さっさと二階へ上って行った。
お浜はうろたえた顔をして彼を見おくった。俊亮はちょっと厳めしい顔をした。お祖母さんはじろりとお浜とお芳の顔を見くらべた。お芳には、これといってとくべつの表情は見られなかった。そして、俊三とお鶴とは、不思議そうにみんなの顔を見まわした。
次郎は自分の机のうえに学校道具をおくと、立ったまま、何か思案した。恭一はまだ帰っていないらしく、帽子も雑嚢も見当らなかった。
見るともなく恭一の本立を見ているうちに、次郎の眼はその中の一冊にひきつけられた。仮綴の袖珍本で、背文字に「葉隠抄」とあった。次郎はいきなりその本を引き出して、頁をめくった。
最初の頁に、学校の講堂の額になっている「四誓願」が大きな活字で印刷してあった。つぎの頁には、朝倉先生の言った「武士道ということは死ぬことと見つけたり。」という文句が見つかった。それには朱線がひいてあった。彼はそれから、つぎつぎに、朱線のひいてあるところだけを見て行った。